Q IT技術者として入社し働いていましたが,倉庫係に配転されてしまいました。我慢するほかないのでしょうか?
A 役職の引き下げ,勤務内容場所の変更には2種類あり,分けて考えます。
①懲戒処分の場合
つまり何か特定のヘマをした罰として降格等された場合。この場合と,基本給の減給を伴う場合は,まず就業規則に根拠規程があることが必要で,なければ違法です。
規程がある場合は,ヘマの重大性や性質と処分の重さが見合っているかどうかによって,違法かどうかが決まります。
②単なる人事権の行使の場合
使用者の裁量になるため,役職手当の減額が伴ったとしても原則は合法です。しかし,
◆業務上の必要性がない
◆労働者の能力にみあってない
◆転勤など,労働者に過度の負担がかかる
◆契約時に「プログラマーとして働く」といった職種限定の合意がある
場合は,違法になる可能性があります。また,役職ではなく職能等級の引き下げの場合は就業規則に根拠規程が必要です。今回はプログラマーと倉庫係でかなり違いますので,倉庫係が劇的に足りずプログラマーが余っているといった事情などかなり強い事情がなければ配転は違法となる可能性があると思われます。
裁判をすれば,職場復帰や降格による減給分の支払,若干の慰謝料が認められる可能性があります。
◆4回にわたる降格で営業職から現業職に移され,ショックで精神科に通院:100万円(東京高裁H17.1.19)
◆自主的な退職に追い込む目的で降格し,賃金支払停止:100万円
(神戸地裁H16.8.31。勤続16年55歳)
◆理事のセクハラを理事長に報告して総務部長職から降格:50万円
(東京地裁H21.6.12 50代)
◆社長の長男を後継者にするため役員を解任となった:40万円
(札幌地裁H23.4.25)
◆育休復職後に降格:30万円
(東京高裁H23.12.27)
単純な降格のみだと数十万程度,執拗な場合はMAX100万と整理していいでしょう。減給を伴う場合,勝訴すれば,慰謝料に加えて減給分も取り戻せます。
地位の確認を求めて訴訟する場合は,賃金請求が絡むかどうか(減給や支払停止の有無)によりますが,着手金20-30万,報酬金も同額くらいが相場と思われます。賃金請求が絡む場合は,賃金額により報酬金がもう20万~上乗せされると思われます。
正確に言えば,減給があれば減給分を請求することになり,地位と給与が密接に関係していれば地位の確認を行ないます。「賃金額を離れて特定の地位で働く権利」というのはなかなか認められにくい傾向にあります。