Q 毎日1時間残業していますが残業代をもらっていません。今回,会社を辞めることになりましたが,残業代を請求できますか?
A 残業時間を厳密に立証する必要があります。タイムカード,業務日報,メールの送信時刻,パソコンのログイン記録,警備の退館記録など,いつ業務が始まって終わったかの証拠を集めましょう。なければメモを残しますが,メモのみでは立証と認めない裁判官もいます。
残業,つまり基本は週40時間超えまたは1日8時間超えの労働をしていれば,その分の時給+αのお金がもらえます。ただし,以下のような細かい決まりがたくさんあります。
・「残業代計算の基礎となる賃金」に,通勤手当(通勤距離に応じるもの)や賞与は入らない。距離に応じない通勤手当や住居費用に応じない住宅手当などは算入される。
・早出した場合の待ち時間,移動時間,休憩時間は労働時間に入らない
・自主的な残業や休日出勤は,労働時間に入らない可能性あり
・10人未満の飲食店小売店等は,週40時間ではなく44時間
・月給制日給制で契約上の労働時間を超えれば残業になりえる(1.25倍など割増はないが時給はもらえる)
・出退勤の自由があり人事の採否に関わる管理職クラスは,残業代請求不可の可能性あり
・ツアコンなど事業外労働者も残業代請求不可の可能性あり
・残業手当定額支給の場合は,その金額を超える残業が必要。なお,就業規則や給与明細上,その手当の趣旨が不明な場合(管理職手当など)は気にする必要なし
残業代は時効が2年と短いので,すぐに弁護士にご相談ください。毎月,残業代が時効消滅します!!
【使用者側のポイント】
・PC閲覧履歴,始末書など,労働者がさぼっていた証拠
・残業を戒めるなど,残業を命じていないことの証拠
・就業規則の整備
①固定残業代支給なら,残業代に対応する手当であることを明記
②通勤手当・住居手当は,距離や家族人数に応じたものにすること(そうしないと残業代計算の基礎に含まれてしまう)
③法内残業(1日8時間を超えない労働),及び常時10人未満の小売業や飲食店は週44時間超えまで,割増賃金が発生しないことも明記。
といった対策を日頃から取っていないと,使用者側は話になりません。また,残業代の支払は法律上の義務ですから,請求に根拠があるなら諦めて払いましょう。裁判となって付加金(裁判所が懲罰的に認める加算金)をとられたのではたまりません。
【労働者側のポイント】
①何より残業時間の証拠確保です。可能な限り客観的な証拠を毎日収集します。2年間の労働日「毎日について」,いつ出勤し,休憩し,退勤したかが厳密に問題になります。
②わずか2年で時効です。相談はお早めに。
【弁護士費用についてのコメント】
単純な金銭請求の形をとりますので,着手金は,請求額×8%,報酬金は回収額×16%(防御側は減額幅の16%)が相場だと思われます。