Q 結婚を誓い合った仲の彼に,今回,突然,別れを告げられました。何か請求できないでしょうか?
A 場合によっては慰謝料請求が可能ですが,ハードルがいくつかあります。
①婚約の成否
婚姻というのは,一生を共にするという重大な契約ですから,単に「結婚しよう」と口で言っただけでは、「契約として成立していない」と裁判で判断されることが多いです。第三者への報告や結納,新居の準備など,それなりに段階が成熟している必要があります。
②婚約破棄の正当性
法的な婚約が成立しているとしても,重大な隠し事が発覚したなど,破棄することが正当な場合は慰謝料請求が否定されます。
③慰謝料の金額
100万~200万くらいが多いですが,それ以外の事例も散見され,かっちりした予測は困難です。
◆2年の交際,新居の不動産や家具購入済,暴力あり
・・・300万円(神戸地裁H14.10.22)
◆5年の交際,婚姻届作成,浮気あり
・・・100万円(東京地裁H15.7.9)
◆披露宴実施済,浮気あり
・・・100万円(東京地裁H20.10.17)
◆交際期間7年,3年間同居,披露宴予約済
・・・180万円(東京地裁H22.2.17)
◆交際期間1.5年,浮気有り
・・・80万円(東京地裁H23.6.24)
【破棄された側の対処】
婚約の成立(婚姻に向けた準備行動。言動や第三者への開示,旅行や式場の準備等)があれば,慰謝料請求をせざるをえません。
【破棄する側の対処】
多額の借金を隠していたなど,正当な破棄事由がない場合は,慰謝料請求されることは覚悟しなければなりません。しかし,この場合も,準備行為の存在等により確定的に婚約が成立しているかどうかは検討を要します。
【弁護士費用についてのコメント】
通常の金銭請求ですので,請求側防御側,ともに着手金20~30万,報酬金回収額(または減額分)の17.3%あたりが相場と思われます。なお,約束違反(債務不履行)という請求なので,弁護士費用を相手に請求することは困難です。