Q 地主さんから,5年後に借地を返してほしいと言われそうです。うえに建物を建てて住んでいるのですが,いつまで借りていられるのでしょうか?
A 借地の場合は,複雑な場合分けがいくつも必要です。慎重に行きましょう。
①適用される法律
【最初の借地契約が平成4年8月1日より前】
建物所有目的であれば,旧借地法というものが適用になります。更新後も旧法です。
上物が堅固建物(コンクリートや鉄筋など)所有目的の借地で,契約期間に定めがないor定めがあっても30年未満の場合は,60年の賃貸期間に(ムリヤリ)なります。35年とか50年という30年以上の約定があればそれに従います。
更新された場合は,(最低)堅固建物なら30年,そうでないなら20年の賃貸期間で更新がされます。それ以上の期間の合意があればそれが有効です。更新の合意,更新請求,法定更新全て同じです。
【最初の借地契約が平成4年8月1日より後】
建物所有目的であれば,借地借家法が適用となります。更新後も同法です。
契約期間の定めがないorあっても30年未満の場合は,30年の賃貸期間に(ムリヤリ)なります。30年とか50年という30年以上の期間の定めがあればそれに従います。
更新された場合は,最初の更新は賃貸期間20年,二回目以降は10年となります。。それ以上の期間の合意があればそれが有効です。更新の合意,更新請求,法定更新全て同じです。
【建物の種類について】
以上の通り,平成4年8月より前の契約は,所有を目的とする建物の種類によるのですが,定めがない場合は「普通」建物所有目的とみなされます(旧借地法3条)。借地契約当時にコンクリートの建物が建っていた場合はともかく,契約書にどのような建物の建築を予定していたか記載がない場合,賃貸期間が20年なのか40年なのか60年なのか,かなり不安定になります。
【建物所有目的について】
借地法等による強力な借主保護は,駐車場の賃貸など,建物所有目的でない賃貸には妥当しません。また,建物の所有が「主たる」目的でない場合(資材置き場に見張り小屋が建っているとか,自動車販売会のスペースなど)も,同法の適用が否定されることがありえます。
②途中の解約や更新拒絶
借主からの解約は,通常,契約書に「解約する場合は半年前予告」といった規程があるのでそれに従います。規程がなく賃貸期間の定めがある場合は,基本的に期間満了まで解約できません。
貸主からの解約も,まずは借主からの解約と同じですが,更新拒絶や任意解約をする場合,「正当事由」というものが必要になり,容易には解約できません。ただし,地代の滞納や無断転貸など,借主に債務不履行がある場合や,借主が借地を使っていないとか,貸主が借地上に建物を建てて居住したいという逼迫した事情がある場合は別です。
以上の通り,法律,及び事実認定を含め,極めて錯綜していますので,そもそも借りる際にはきちんとした契約書をまくのが基本です。
【ポイント】
①貸主側は,建物所有目的の土地賃貸は,一度貸したら30年以上,返ってこないことを覚悟しましょう。それが嫌なら,事業用定期借地権というものにすれば,10年~で返ってきます。ただし,公正証書でやることが必要です。
②明渡しをしてほしいなら,無断転貸や賃料滞納があった場合,「解約」の意思表示をしましょう。5年または10年で解除権が時効にかかる可能性があります。
【弁護士費用についてのコメント】
貸主側から明渡し請求をする場合,着手金30万円~,報酬金30万~,相手が強硬に明け渡さずに強制執行まで至った場合,報酬金50万~80万くらいが相場と思われます。