最高裁に告ぐ

 

岡口基一氏著

 

 

 

岡口氏が分限裁判を受けた記録。

 

同裁判の記述を通して,訴状審査等の裁判実務に対する裁判官の意識をかいまみることができる点は貴重。

いわきの図書館にある。

 

分限裁判申立書からはどの懲戒事由にあたるか分からないから補正するべき,という。

 

ただし,訴状審査の段階では,請求原因らしきものが一応書いてあれば審査を通ることになっているはず(判例)なので,答弁書の段階で被告から釈明を厳しく求めることになろう。

特に,過失の内容などは,抽象的なまま訴状送達がされることも多い。いみじくも,岡口氏は,具体的ナマの事実レベルの要件事実の摘出の重要性をいつも訴えているが,争うところについては,積極的に(ナマの具体的事実レベルの)要件事実の主張を相手に求めたい。たまねぎ理論によれば,それで訴訟の趨勢が決まることもあろう。

 

判事補は,当事者がした主張に答えない,当事者に主張させない,当事者がした主張にデタラメをもって答える,というのはやらないよう,裁判長から徹底的に指導されるという。

 

 

理由不備,審理不尽,経験則違反,つまり,上告事由を作るな,ということであろう。たしかに,特に高裁の裁判官は,「これは抗弁の主張なのか」といった,主張があるのかないのかについて,かなり厳しく突っ込んでくる傾向がある。これは,万が一にも主張の存在を落とすと,理由不備で最高裁(調査官)からつつかれるからだろう。

 

判タの論文によれば,経験則違反で上告が通るのはほとんどないということだし,控訴上告の理由はだいたいが経験則違反の主張なので,まあこの点はいいだろう。

 

審理不尽も,不意打ち認定された場合を除き,いいづらい。

 

控訴審で理由不備があったら,すかさず上告してみようと思う。

意外に,「きちんと抗弁を主張しているのに,判決で無視されている」というのは,結構ある気がする。